動物看護師の中には麻酔モニタリングを行う人は多いと思います。
ですが、麻酔モニタリングは麻酔管理と違い薬剤の投与を行わないことから、あまり準備せずに担当することがあります。
そんなときに起きるのが麻酔中のトラブル。
愛玩動物看護師専門の当サイトが「麻酔中のトラブル」について詳しく丁寧に解説していきます。
麻酔モニタリングに関わる人やこれからやってみたい方はぜひご覧ください。
もし、麻酔モニタリングに必要な用語が分かりにくいという方は下記もご参考にしてくださいね!
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はじめに麻酔モニタリングの基本を押さえよう!
麻酔モニタリングで起きるトラブルのお話をする前に、まずは基本をきちんと理解していきましょう。
そもそも、麻酔とは薬物を用いて人為的に痛みや感覚などを消失させることを言います。
犬猫の場合にはさらに、”麻酔管理”と”麻酔モニタリング”という二つの言葉が存在します。
麻酔モニタリングは「五感と生体情報モニタを用いて患者を絶え間なくモニタリングすること」
※日本獣医麻酔外科学会の犬および猫の臨床例に安全な全身麻酔を行うためのモニタリング指針もご参考にしてください。
動物看護師が行うのは後者の麻酔モニタリングになります。
なので、患者(動物)が「今」何が起きているのか、どのように「変化」していくのかを常に考えて絶えずモニタリングする必要があります。
では、麻酔モニタリングの基本を押さえたところで、次の麻酔中で考えられるトラブルを見ていきましょう。
麻酔中で考えられるトラブル
麻酔中に起きる・考えられるトラブルは、
- 気管チューブのリーク
- 低喚気
- 低血圧
- 徐脈、頻脈
- 深麻酔
- 抜管後の上気道閉塞
などになります。
どれもエマージェンシーになる原因ですね。
例えば、気管チューブのリークでは、手術室への移動時や整形外科手術時など患者や四肢を動かしたりするときに、人工呼吸器と繋がっている気管チューブが外れたりする場合があります。
また、挿管前に行う気管チューブのカフリークテストをしっかりと実施されていない場合も、同様にトラブルの元になります。
低喚起や低血圧なども、ほっておくと致命的になるトラブルなので、すぐに何かしらの対応をしなくてはなりません。
フレブルなどの短頭種では抜管後にも注意が必要で、麻酔後のトラブルではとても多いです。
ちなみに、麻酔に関連する死はどれくらいの割合で起きるのかも合わせて見てみましょう。
麻酔関連で死亡する割合は?
麻酔関連で死亡する割合は、
犬 | 0.17% |
猫 | 0.24% |
ASA3-5の全身状態が悪い場合でも、
犬 | 1.40% |
猫 | 1.40% |
実は麻酔で死亡するのはかなり低い割合なのです。
その中でも死亡する主な原因は「換気と循環」。
これらを五感や生体情報モニタを使って、徹底的に防いでいこうというのが麻酔モニタリングなんです。
麻酔中のトラブルは先読みと絶え間ないモニタリングで防ごう!
上記でもお伝えした通り、麻酔中に亡くなる割合は極めて低いですが、多くの死亡例は麻酔後がほとんどです。
それは、術中に低喚起、低循環のまま維持していたり、抜管後の酸素化が不十分だったり、様々な理由が原因です。
ではこれらをどのように防いだらいいのかそれは、”先読みをして絶え間ないモニタリングをする”ことです。
麻酔中に血圧が下がることは必ずと言っていいほどありますよね。
その原因は多々ありますが、主に麻酔薬による血管拡張作用や手術操作などによって起こります。
もし、麻酔深度が不十分で麻酔薬の濃度を上げたときに考えられることの一つは血管拡張作用による血圧の低下です。
そしてこの予測こそが、先読みになります。
低血圧になってから何かを対応するのではなく、こうなるだろうと先読みをして準備をする。このように考えることで、麻酔中に起きるすべてのトラブルは予防していくことができます。
ちなみに、術式ごとや症例ごとに考えられるトラブルは別の記事で解説したいと思います。
「麻酔深度が下がった、血圧が下がった、心拍数が上がった」などは絶え間ないモニタリングによって気づきを得ます。
その次は先読みを行い、このまま血圧が下がると低血圧になるかもしれないから麻酔担当獣医師に警告しよう!など、素早く患者の状態を把握して次の変化を考えられるようになっていきましょう。
まとめ
麻酔中に起きるトラブルは先読みと絶え間ないモニタリングによって予防することができます。
今がどのような状態で次にどのような変化が起きるかを常に考えて、麻酔担当獣医師にすぐ報告できるようにしていきましょう。
ちなみに、麻酔に関するこんな言葉があります。
安全な麻酔薬は存在しない
安全な麻酔法も存在しない
存在するのは安全な麻酔医だけである
これから犬猫の麻酔モニタリングに関わる方はぜひ覚えておきましょう!
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