動物が来院した際には、必ず聴診器による聴診を行います。
聴診によって得られる情報は多く、必須の知識となります。
この記事では、犬や猫における聴診のやり方について、愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しく丁寧にお伝えしています。
基礎をしっかり学びたい動物看護師さんはぜひ読んでみてくださいね。
聴診とは?
聴診とは、聴診器を使用して、体の内部から発生する音を聴くことです。
聴診器を用いることで分かる情報は、
- 循環器
- 呼吸器
- 消化器
についてとなります。
では以下で、それぞれのやり方(聴取部位)や音の構成、異常音などについてお伝えしていきます。
心音の聴診「循環器」
心音の聴診では、主に心拍数と雑音の有無を確認します。
心拍数は安静時にはかることが重要ですが、診察室では興奮・緊張状態であることが多いため、心拍数が増加していることがしばしばあります。
犬で70-160回/分程度、猫140-220回/分程度となります。
正常な心拍数などのバイタルについてはこちらもご参考にしてください。
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心音の聴取部位
心音は左側胸部にて聴診します。
僧帽弁口部
肘を胸にくっつけたあたりの場所が左側肋軟骨接合部第5肋間になります。
大動脈弁
肺動脈弁
肘を胸にくっつけたときの、上腕骨の場所がおよそ左側胸骨第2~4肋間です。
心音の構成
心音はⅠ音とⅡ音よりなります。
Ⅲ音とⅣ音は過剰心音と呼ばれ、馬などの大動物では生理的でありますが、その他小動物では常に異常な心音です。
Ⅰ音
Ⅰ音は、左心室の収縮に伴う僧帽弁の閉鎖音が主音となります。
三尖弁閉鎖音(および大動脈・肺動脈弁開放音)も含みます。
Ⅱ音より低く長いことが特徴で、心尖部でよく聴取されます。
Ⅱ音
Ⅱ音は左心室拡張にともなう、大動脈弁閉鎖音が主音となります。
肺動脈弁閉鎖音(および三尖弁、僧帽弁の開放音)も含みます。
Ⅰ音より高音で短いことが特徴で、心基底部でよく聴取されます。
Ⅲ音
Ⅲ音は三尖弁及び僧帽弁開放後の心房から心室への血液流入音で、Ⅱ音の直後に生じます。
Ⅲ音は常に異常所見です。
Ⅳ音
Ⅳ音は心房収縮音であり、Ⅰ音の直前に生じます。
こちらも常に異常所見です。
異常な心音(心雑音)
心雑音は、血液の乱流により生じ、収縮期雑音と拡張期雑音に分けられます。
収縮期雑音
収縮期雑音は、駆出性雑音と逆流性雑音よりなります。
前者は、心室から駆出される血液が狭窄部位を通過するときに出現します。
後者は、心室が収縮するときに、心室の血液が心房へ逆流する際に生じます。
僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症でみられます。
拡張期雑音
拡張期雑音は、前収縮期性雑音と拡張期逆流性雑音よりなります。
前者は、心房収縮により血液が心室に流入する拡張期に出現し、僧帽弁狭窄や三尖弁狭窄でみられます。
後者は、心室収縮がおわった拡張期に半月弁が閉まらずに逆流するときに生じ、大動脈閉鎖不全や肺動脈閉鎖不全にてみられます。
呼吸音の聴診「呼吸器」
呼吸音の聴診では、主に呼吸数と雑音の有無を確認をします。
左右の肋間に聴診器をあて聴取します。
呼吸音は聞き取りにくいために、正常かどうかの判断には知識と経験が必要となります。
呼吸数も心音と同様、安静時にはかることが重要ですが、こちらも診察室では興奮・緊張状態であることが多いため、増加していることがしばしばあります。
犬で15-25回/分程度、猫20-40/回程度となります。
異常な呼吸音
正常な呼吸音は「スースー」という音であり、これ以外は異常な呼吸音(副雑音)となります。
ラッセル音
ラッセル音は、気管や気管支、肺胞などに滲出物や分泌物が存在し、気流によって振動する際に発する音です。
ラ音ともいわれます。
肺炎や気管支炎などで生じます。
後者は、気管支内の粘ちょう性のある分泌物によって、気流が気管支の狭窄を示す音です。
慢性気管支炎や結核などで聴取されます。
捻髪音
気管支粘膜の腫脹や粘ちょうのある分泌物によって発せられる音です。
気管支炎や肺炎、肺水腫などで聴取されます。
振とう音
拍水音ともいわれ、胸膜内・心膜内に液体と気体が混在しているときに生じる音です。
心膜炎、膿胸などで聴取されます。
胸膜摩擦音
胸膜面に炎症や刺激があり、これらがこすりあうときに生じる音です。
蠕動音の聴診「消化器」
消化器の聴診では、腹部にあてた聴診器により蠕動運動を聴取します。
下痢や嘔吐などのトラブルがあるときのみではなく、食前・食後によっても蠕動音は変化します。
腸蠕動音は、正常・減少・消失・亢進の4つに分類されます。
まとめ
聴診器による聴診は、診察の多くで行う検査のひとつです。
正常音と異常音を把握することにより、次に行う検査の手助けとなります。
聴診を円滑に行うためには、解剖的な位置も把握しておく必要があります。
また、心音などはすぐに聞き取れるようになることは絶対に無く、日々コツコツと練習を積み重ねてやっと少しづつ聴こえるようになります。
聴診は一生のスキルになるので、早いうちから聴く癖をつけていきましょう!