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【動物看護】犬猫の疼痛評価「ペインスケールで痛みを理解する!」

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動物の入院管理をするうえで、痛みのケアをしてあげる機会は多くあります。

その際に、「どういったサインが痛みを意味しているのか?」を理解しておくことで、スムーズな対応が可能となります。

この記事では、痛みが起きるしくみや犬猫の疼痛評価の方法を愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しく丁寧にお伝えしています。

疼痛管理をしっかり行い、回復期のケアが努められるようになるために、チェックしてみてくださいね。

目次

痛みが起きるしくみ

痛みの情報は末梢神経を伝導して脊髄後角へ入力され、シナプスを介した視床への伝達により、大脳皮質領域へ投射されて認知されます。

そもそも、痛みにはケガや手術の際に損傷した組織を修復する間、体を動かさないように警告する役割があります。

痛みがあることで、体がダメージを受けていることを認識し、体を守ることができるのです。

ただし、その痛みを適切に抑えることは、その後の治癒や管理にとても重要です。

最近では、犬や猫の周術期の疼痛管理について、マルチモーダル鎮痛という作用機序の異なる鎮痛薬を併用して、相加的または相乗的な鎮痛効果を得る方法が主流となっています。

鎮痛薬の種類や作用については下記の記事をご参考にしてください。

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犬猫の疼痛評価方法~急性の疼痛について

犬や猫は話すことができませんので、発するサインから痛みを読み取る必要があります。

犬においては『動物のいたみ研究会』で作成された犬の急性痛ペインスケールを用いて痛みの程度を判定するのがよいと考えられています。

犬における痛みのサイン レベル0

  • 痛みの兆候はみられない

犬における痛みのサイン レベル1

  • ケージから出ようとしない
  • 尾の振り方が弱々しい、振らない
  • 人が近づくと吠える
  • 反応が少ない
  • 落ち着かない、そわそわする
  • 寝てはいないが、目を閉じている

などがあります。

犬における痛みのサイン レベル2

  • 痛いところをかばう
  • 第三眼瞼の突出
  • アイコンタクトの消失
  • 自分からは動かない(動くように促すと動く)
  • 立ったり座ったりする

などがあります。

犬における痛みのサイン レベル3

  • 背中を丸めている
  • 心拍数増加
  • 攻撃的になる
  • 呼吸が速い
  • 体が震えている
  • 流涎
  • 横臥位にならない

などがあります。

犬における痛みのサイン レベル4

  • 持続的に鳴きわめく
  • 全身の強直
  • 間欠的に泣きわめく
  • 食欲廃絶
  • 眠れない

などがあります。

猫においても、犬と同様、痛みを感じているときには行動の変化がみられ、それによって痛みの程度を把握すべきとされています。

猫における痛みのサイン

  • 横になり、緊張またはじっとしている
  • 背中を丸めてケージなどに背をくっつけて静かにしている
  • 頭を下げて耳を垂らし、2つの目がV字になるくらい吊り上がっている
  • 特定の部位を触られるとうなる、引っ掻く、かみつくなど

といった急性痛に見られるサインに合わせて、

  • 活動性の低下
  • 食欲廃絶
  • おとなしい
  • 好奇心の消失
  • 隠れる
  • シャーシャーうなる
  • 硬直した姿勢
  • 警戒行動
  • 逃げようとする
  • グルーミングをしない
  • 尾を打つように振る
  • 過剰に舐める

といったサインも痛みを示しています。

ただし、猫においては痛みを示しづらいこともあり、それを評価することが難しい場合も多いです。

これらの痛みのサインを理解することで、動物個々に合った疼痛管理が可能となります。

また、手術の際には、あらかじめ手術で生じる痛みを術前から予防しておき、術後も抑えてあげることが重要です。

犬猫の疼痛評価方法~慢性疼痛

手術やケガなどの急性の痛みの他にも、関節炎などの運動器疾患による慢性痛も評価してあげる必要があります。

犬の場合には、

  • 散歩に行きたがらなくなった
  • 階段や段差の上り下りを嫌がるようになった
  • 家の中や外であまり遊ばなくなった
  • 立ち上がるのがつらそうにみえる
  • 跛行がある
  • 尾を下げていることが多くなった

などの変化が認められた場合には、慢性痛がある可能性があります。

猫においても、

  • 高いところに行かなくなった
  • ジャンプをしなくなった
  • グルーミングの頻度が減った
  • 爪とぎをしなくなった
  • トイレに入るのがへたになった
  • 気性が荒くなった
  • 食欲が落ちた

などといったことが慢性痛を示している可能性があります。

まとめ

手術やケガに際しては、当然のことながら痛みを生じます。

また、散歩がきらいになった、食欲が落ちたなど一見すると痛みとは関係ないような症状が現れていることもあります。

動物が発している痛みのサインを読み取り、早めに対処してあげるようにしましょう。

参考資料
CLINIC NOTE 特集 鎮痛薬を使いこなす,interzoo,No86,2012,9月号,p8-p15
>公益財団法人 動物臨床医学研究所 ホームページ
>メタカム ホームページ
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