動物病院にやってくる動物は健康から重症まで様々です。
その中でも、ショックの動物は一刻を争う状態になります。
動物看護師はすぐ対応できるようにショックを理解しておかなければなりません。
この記事では、
・ショックの分類
・ショックの対処法
について、愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しく丁寧に解説していきます!
新人動物看護師の方や救急が苦手!という方は是非ご覧ください。
ショックとは
ショックとは、動物体が受けた種々の障害ないしストレスによって、急性に全身性の循環障害が起こり、局所組織の低酸素のため生じる症候群です。
全身の臓器や組織に十分な血液が届かなくなってしまうため、臓器の機能障害や意識障害などを生じます。
多臓器不全やときとして死亡してしまうこともある怖い状態です。
ショックの分類
ショックには、いくつかの分類方法があります。
以下で原因別の分類と、症状の経過による分類をしていきます。
原因別の分類
ショックの原因別の分類として、
- 心原性ショック
- 循環血液量減少性ショック
- 血管抵抗減少性ショック(敗血症性ショック、神経原性ショック、アナフィラキシーショックなど)
- 閉塞性ショック
があります。
心原性ショック
心臓のポンプ作用の急激かつ顕著な低下が原因となり、組織への酸素運搬が著しく低下し、組織の酸素要求量を満たすことができなくなった状態です。
- 心筋梗塞
- 心筋症
- 弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症の末期など)
- 心膜炎、心膜疾患
- 心タンポナーデ
- 薬物(アドリアマイシンなど)による収縮不全に起因するもの
- 不整脈によって引き起こされるもの
などがあります。
血圧の低下(収縮期血圧<90mmHg)やショック徴候が認められます。
さらに収縮機能や拡張機能の低下、不整脈などによる低心拍出量状態が原因として疑われる場合を心原性ショックと診断します。
原因に合った治療、すなわち、収縮不全が見られる場合にはドブタミンやドパミン、ノルアドレナリンなどの強心薬や昇圧薬を、心タンポナーデの解除には心膜穿刺を、不整脈が見られる場合にはリドカインの投与などを行います。
循環血液量減少性ショック
循環血液量減少性ショックは、急速に体液や血液を失うことによるショックです。
- 腹腔内腫瘤の破裂
- 外傷
- 凝固不全による出血
- 嘔吐や下痢、頻尿、胸水や腹水貯留による水分の喪失
- 重度脱水
といったことがあります。
血液量の減少に伴って心拍出量が減少して血圧が低下しますが、それを代償するために心拍出数の増加と末梢血管の収縮が生じます。
このときにみられる身体検査上の特徴として、
- 頻脈や脈圧の低下
- CRT延長
- 白色もしくは薄いピンク色の粘膜
- 四肢末端の冷感
- 意識のもうろう
といったことがみられます。
初期蘇生を開始するとともに、晶質液のボーラス投与を行います。
十分な輸液を行っても改善されない場合には、循環作動薬(昇圧剤)などの使用を考慮します。
血管抵抗減少性ショック
敗血症性のショックと神経原性ショック、アナフィラキシーショックなどがあります。
炎症性サイトカインと呼ばれる物質が大量に体内で生産されるようになり、血圧の低下や血管損傷などが引き起こされます。
敗血症に伴うショックは、そのほかのショックと異なり、初期に血管拡張および心拍出量の増加による粘膜の充血、四肢末端の温感、バウンディングパルス(脈が跳ねたように大きく振れること)、血圧の上昇が認められることが特徴的です。
輸液や血管収縮薬、強心薬などにより循環動態を安定化させたり、人工呼吸管理などの集中治療が必要となることもあります。
外傷がある場合にはその治療を、また輸液やノルアドレナリン、アトロピンなどを用いた治療を行います。
アドレナリンや抗ヒスタミン薬、ステロイド薬にて治療します。
閉塞性ショック
閉塞性ショックは、
- 心タンポナーデ
- 胃拡張胃捻転症候群
- 胸腔疾患(緊張性気胸)
- 肺血栓塞栓症
などに代表される救急疾患により、心臓への血液還流が著しく減少し、全身への心拍出量が減少することで引き起こされる症候群です。
閉塞の原因が解除できれば、劇的に状態改善が得られることが特徴です。
症状の経過による分類
症状の経過による分類として、
- 一次性ショック
- 二次性ショック
- 不可逆性ショック
があります。
一次性ショック
短時間に反射的にショック状態に陥る場合を一次性ショックと言います。
末梢血管の急激な拡張により、脳の意識中枢の血流が急減することでなります。
徐脈や皮膚の蒼白、四肢の冷感がみられます。
多くは一過性で、回復は速い傾向にあります。
二次性ショック
ある時間の経過の後に発現するショックを二次性ショックと言います。
出血や熱傷、脱水などのために循環血液量が減少することが原因となります。
不可逆性ショック
輸液や輸血、酸素吸入などの治療によっても救えない状態です。
二次性ショックが長く続くことで生じ、主要臓器と脳の無酸素状態が続くことで虚脱し、ショック死となります。
まとめ
ショックとは、様々な原因によって、血圧や臓器への酸素供給量が急激に低下し、生命を脅かす状態です。
原因に沿った一刻も早い治療を行う必要があります。
ショックの原因や分類、それぞれの対処法を学び、即座に対応できるようにしましょう。
コメント