何らかの病気により自発的に食事が摂れない場合には、口から強制的に、もしくはチューブを介して栄養を入れてあげる必要があります。
この記事では、鼻や食道、胃カテーテルなどによるチューブ栄養の方法や特徴について愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しくお伝えしています。
病気の治癒には栄養管理がとても重要です。
経管栄養をしっかり学んで、患者さんの栄養管理に努めるようにしましょう。
経腸栄養の方法
経腸栄養とは、体に必要な糖質やタンパク質、脂質や電解質などを腸を介して投与する方法です。
栄養素を口から補給する経口法と、チューブを用いて投与する経管栄養法があります。
経管栄養法には、
- 経鼻カテーテル
- 食道カテーテル
- 胃ろうチューブ
- 空腸チューブ
など様々な方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、また症例に応じて使い分ける必要があります。
特に猫の経腸栄養は重要で、肝リピドーシスという猫特有の疾患の治療のため、比較的よく使用されます。
経鼻カテーテル
鼻から細いカテーテルを入れて栄養を送る方法です。
比較的短期間の栄養管理に用います。
無麻酔でできる処置のため、いつなんどきでも簡単に行うことができます。
嘔吐が激しい症例では、設置をしてもカテーテルが刺激となり嘔吐時にカテーテルが逆流してしまうことがあるため気をつけなくてはいけません。
また、呼吸状態が悪い場合には、鼻腔が狭くなってしまうため使用できないこと、動物が取ってしまわないようにエリザベスカラーが必須となることに注意が必要です。
食道カテーテル
設置の際に、短時間の鎮静、もしくは全身麻酔が必要となります。
また、皮膚や食道の小切開も必要となります。
チューブは犬猫ともに16~20Frサイズを使用することが多いです。
胃ろうチューブ
設置の際には、全身麻酔と内視鏡が必要となります。
また、重度の腹水や腹膜炎がない場合にのみ設置が可能となります。
胃ろうチューブは、経鼻カテーテルや食道カテーテルと違って、確実に胃内に設置できることが特徴です。
そのため、チューブの吐き戻しや気管への迷入がないことといったメリットがあります。
デメリットとしては、全身麻酔と内視鏡が必要なことがあります。
また、食道カテーテル同様、小切開が必要となります。
嘔吐が重度の場合や胃の運動性が低下しているときには、胃に栄養を入れてもあまり意味がないため、胃ろうチューブは推奨されません。
カテーテルサイズは犬猫ともに16~20Frを用いることが多いです。
空腸チューブ
空腸チューブは、基本的には開腹手術で設置を行います。 嘔吐が激しい症例でも空腸以下に栄養を入れることができるため、入れた栄養を嘔吐などで利用できなくなる心配がないことがメリットです
栄養剤の種類
基本的には、犬猫で使用できる経腸栄養剤を用います。
胃を経由する場合には、ドライフードをふやかしてミキサーにかけて与えてもよく、また、チューブを通りさえすればどのような食事を投与しても問題ありません。 チューブが細くて流動食しか投与できない場合には、各種流動食を用います
まとめ
経管栄養法には、経鼻カテーテルや食道カテーテル、胃ろうチューブ、空腸チューブなど様々な投与経路があります。
麻酔ができるかどうか?嘔吐の頻度がどれくらいなのか?どのくらいの期間の設置が必要なのか?などによって使い分けをします。
経管栄養を行うことで、スムーズな栄養の摂取と、腸管粘膜の機能が衰えることを予防できます。
個々の動物にあった方法をしっかり把握するようにしましょう。
・辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,猫の治療ガイド2020,EDUWARD Press,p1157-p1161