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動物看護師が覚えるべき「犬・猫の代表的な循環器疾患まとめ」国家試験に向けて予習しておこう!

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動物看護師は犬や猫の様々な疾患について知っておく必要があります。

その中でも循環器の疾患は、外来や入院管理で遭遇する場面が多く、命に係わる疾患なので必ず理解しておかないといけません。

また、愛玩動物看護師国家試験の出題範囲に含まれているのでしっかりと予習をしておきましょう。

この記事では、「犬・猫の代表的な循環器疾患」について愛玩動物看護師専門のPVNPortalが詳しく丁寧に解説していきます!

国家試験対策や自身があまりない方はぜひ最後までご覧ください。

※目次から該当の疾患にページジャンプできます

目次

犬・猫の代表的な循環器疾患

犬や猫の循環器疾患はたくさんあります。

まずはじめに各々の診断は、

  • 臨床所見や稟告(咳や運動不耐性、腹水や浮腫など)
  • 聴診(心雑音の聴取)
  • 血液検査(フィラリア感染や代謝性疾患、肝腎機能の検査、NT-proBNPなど)
  • レントゲン検査(心臓の大きさや変形、肺水腫の有無など)
  • 心エコー検査(重要な検査で、心臓の機能的評価を行う;弁構造や逆流、狭窄など)
  • 心電図(不整脈の確認)
  • 血圧測定(高血圧になっていないか)
  • 造影検査(横隔膜ヘルニアを疑う場合)

など複数の検査を組み合わせて行われます。

以下でお伝えする病気はどれも重要なものですので、その概要や病態を知っていただけたらと思います。

僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症)

僧帽弁閉鎖不全症(MR)は、左心房と左心室を区切っている弁である僧帽弁に異常が生じることで、弁の閉鎖が不完全となり、左心室から左心房へ血液が逆流をする病気です。

犬の心臓病ではもっとも発症率の高い病気であり、高齢のチワワやマルチーズなどの小型犬やキャバリアキングチャールズスパニエルなどでよくみられます。

血液の逆流量が増えることで心臓内にたまった余剰な血液が心臓を押し広げ、心拡大が進行します。

ある程度までは、心臓が代償的に働き対応するため、症状がありません。

ただし、進行に伴い、

  • 運動をすることを嫌がったり
  • 咳が増えたり
  • 失神したり

などが見られます。

さらに重症となると、肺へ血液がにじみ出た『肺水腫』という病態となり、呼吸困難やチアノーゼなどの症状を引き起こし、死に至ることもあります。

各ステージにより治療法は異なりますが、ACE阻害薬(心臓の負荷を取る血管拡張薬)や強心剤、利尿剤などの内科療法が治療の主体となります。

最近では、外科手術にて僧帽弁を修復する治療を行う専門病院もあります。

心筋症

心筋症は、心臓を構成する筋肉が、なんらかの原因により通常の厚さよりも厚くなったり、薄くなったりする病気です。

大型犬でよく見られる拡張型心筋症(DCM)と猫でよく見られる肥大型心筋症(HCM)、拘束型心筋症(RCM)があります。

拡張型心筋症は、心臓の収縮性が進行性に低下し、心臓が特徴的な拡張を呈する病気です。

タウリン欠乏や遺伝子疾患あるいは自己免疫疾患などの可能性が示唆されていますが、現在のところ明らかな病因は不明です。

猫における肥大医型心筋症の発生頻度はとても高く、顕著な臨床症状のない見た目上健康的な猫においても、14.7%の割合で肥大型心筋症と診断されているとの報告もあります。

好発品種は、

  • メインクーン
  • ラグドール
  • アメリカンショートヘア

などになります。

拘束型心筋症は心臓の拡張が高度に障害される病気で、発生は比較的まれですが、高齢の猫でしばしば見られます。

無症状であることもありますが、進行に伴い呼吸困難や肺水腫、失神など様々な症状を呈します。

心筋症の場合には、基礎疾患がないかの究明も大切となります。

すなわち、拡張型心筋症の場合は甲状腺機能低下症などの収縮期機能障害を引き起こす疾患が、肥大型心筋症の場合は、甲状腺機能亢進症やリンパ腫などが併発している場合もあるので、心筋症の治療と同時に原因や併発疾患の有無を追究していく必要があります。

血栓塞栓症(動脈血栓塞栓症)

動脈血栓塞栓症は、心臓内でできた血栓が、血流により血管内に塞栓した状態です。

猫の大動脈血栓塞栓症(ATE)は心筋症と関連があり、猫の肥大型心筋症や拘束型心筋症に併発をしやすいです。

一般的に、猫の大動脈血栓塞栓症は、腹大動脈の分岐部分に血栓を形成するため、急な後ろ足の麻痺や起立困難、激しい疼痛がみられることが多いです。

多くの症例で呼吸困難や頻呼吸を示し、心不全の管理や疼痛管理、さらなる血栓形成の抑制などの緊急的な処置が必要となります。

血栓を溶解したり、バルーンカテーテルを用いた血栓除去を行うこともあります。

治療が困難でかつ予後も悪い疾患であるため、安楽死が選択されることもしばしばあります。

腹膜横隔膜ヘルニア

腹膜横隔膜ヘルニアは、胸部と腹部は横隔膜で隔てられており、ここに生じた穴により、腹部の臓器の一部が胸腔に移動する病気です。

交通事故などの外傷で急性に発生することもあれば(外傷性横隔膜ヘルニア)、先天性(腹膜心嚢膜横隔膜ヘルニア、腹膜胸膜横隔膜ヘルニア、食道裂孔ヘルニアなど)で長期的に気づかれず存在する例もあります。

無症状で気づかれないこともありますが、

  • 呼吸が速い
  • 食欲低下
  • 運動不耐性

などの症状がみられることもあります。

また、避妊手術や他の検査を行う際に、偶発的にみつかることもしばしばあります。

横隔膜ヘルニアが見られた場合には、外科的手術によって胸部に移動した臓器を元に戻し、横隔膜の穴をふさぐ治療を行います。

動脈管開存症

動脈管開存症(PDA)は、犬においてもっとも多い先天性心疾患の1つです(先天性心疾患の25~30%)。

猫においては比較的まれな疾患です(先天性心疾患の3%)。

胎子のときは、肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管という管があります。通常、生後数時間で動脈管は機能しなくなり、その後ふさがるようになります。

動脈管開存症の場合には、動脈管がふさがらず、大動脈から肺動脈へと血液が流れ込み、肺や左心系へ大きな負担がかかってしまいます。

初期には特に症状は見られませんが、病態が進行すると疲れやすい、咳が出るなどの症状が出ます。

動脈管を閉鎖することで根治できることから、外科的手術が適応となります。

無治療の場合、肺高血圧症が併発し、アイゼンメンガー化することもあるため、診断後は早期に外科処置をすることが望ましいです。

右-左短絡に移行した場合には、動脈管開存症の閉塞により、血行動態の維持が困難となり死亡するため、根治治療は選択しません。

※アイゼンメンガー症候群

アイゼンメンガー症候群とは、左-右短絡性心疾患(動脈管化依存症、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)において、肺高血圧症が続発することで、右心系の圧が左心系の圧を上回り、逆短絡(右-左短絡)となった病態のことです。

右心系の圧は、通常、左心系より低圧ですが、アイゼンメンガー症候群においては、肺高血圧症により、右心系の圧が上昇し、左心系の圧を超えてしまっています。

チアノーゼやふらつき、失神、運動不耐性などの症状が現れるようになります。

一度アイゼンメンガー症候群になると、原因となった病気に対する治療ができなくなってしまうために、適切なタイミングで先天性心疾患の治療を行うことが重要です。

心房中隔欠損症

心房中隔欠損症(ASD)は、心房中隔(左心房と右心房の間にある壁)に存在する先天的な欠損孔により、血液が左右の心房間を通過する疾患です。

先天性心疾患の中での発生率は、「犬で2~3.1%程度、猫で6%程度」とまれな疾患ですが、欠損孔が小さい場合には、臨床症状がないために、見逃されている症例も少なくないと考えられています。

胎子期には心房中隔には穴が開いているのですが、通常生まれる前に閉じます。

ただし、何らかの理由で閉じない場合には、その穴を通じて左心房から右心房へ血液が流れ込み、結果的に右心房に大きな負担がかかり、心不全の症状が起こります。

欠損孔が大きい場合や他の心疾患を併発している場合などには、疲れやすい、チアノーゼなどの症状が見られます。

欠損孔が小さい場合には特に治療を必要としませんが、大きな場合には心臓の負荷を取る薬の投薬や外科手術、カテーテル治療にてふさぐようになります。

右-左短絡となった症例では、欠損孔の閉鎖を行うと、その後に急激な肺高血圧症の悪化を招くため、外科療法およびカテーテル治療は禁忌となります。

心室中隔欠損症

心室中隔欠損症(ASD)とは、犬や猫の先天性心疾患の中でも比較的遭遇頻度の高い病気です。

胎子期には心室中隔には穴が開いているのですが、通常生まれる前に閉じます。

ただし、何らかの理由で閉じない場合には、その穴を通じて左心室から右心室へ血液が流れ込み、結果的に右心室に大きな負担がかかり、心不全の症状が起こります。

欠損孔が大きい場合や他の心疾患を併発している場合などには、呼吸困難、チアノーゼ、咳が出るなどの症状が見られます。

欠損孔が小さい場合には特に治療を必要としませんが、大きな場合には心臓の負荷を取る薬の投薬や外科手術にてふさぐようになります。

心室中隔欠損症においても、短絡量が多い場合には外科手術は禁忌となるため、内科的療法(ACE阻害薬や利尿剤など)にて治療を行います。

卵円孔開存症

心房中隔欠損の中でも、心房の壁が一部弁のようになっており、くっついたり離れたりしている状態を卵円孔開存症(PFO)と呼びます。

卵円孔は通常、出生後に自然に閉鎖されます。

人においては卵円孔開存症自体が問題を引き起こすことはほとんどないのですが(血栓ができると卵円孔を通って脳梗塞を引き起こすことはある)、犬においては犬糸状虫奇異性塞栓症の発生頻度が高いために、外科的処置を行うこともあります。

※犬糸状虫奇異性塞栓症とは、右-左短絡が存在する心奇形を有する動物において、静脈にできた塞栓が開存孔を介して左心系に移行して、動脈末梢において塞栓症を引き起こした状態のことです。

※最近では、犬糸状虫の寄生予防が広く実施されているため、犬糸状虫奇異性塞栓症の頻度も非常に低下しております。

右大動脈弓遺残症(血管輪異常)

右大動脈弓遺残症(PRAA)は、本来とは異なる場所から血管が発生し、それに付随する血管の遺残物が食道や気管を狭窄させる先天性心疾患です。

好発犬種は、

  • ジャーマンシェパードドッグ
  • ボストンテリア
  • ラブラドールレトリーバー

などです。

ミルクや流動食など食道が狭くなっている部分を通過できる食べ物では症状が出ませんが、ある程度の固形物を食すようになる離乳時から吐出などの症状がみられます。

食後数時間後に吐いたり、吐いた食物が誤って気管や肺に入ってしまう誤嚥性肺炎を合併していることもあります。

立位での給餌による食事管理やチューブでの給餌、外科的血管輪切離によって対応します。

犬糸状虫症(フィラリア症)

フィラリア症は、別名『犬糸状虫症』ともいい、フィラリアという寄生虫が犬に感染して、慢性的に心臓や呼吸器の障害を起こす病気です。

予防の普及により、都市圏ではほとんど遭遇しない疾患となりましたが、地域によっては現在でも多く見られます。

犬への感染には『蚊』が深く関わっており、感染すると、咳が出て呼吸が苦しくなったり、貧血になるといった症状が見られます。

多数寄生した症例では容易に駆虫してしまうと、肺の細動脈に塞栓症を引き起こすため、他の寄生虫と違い簡単に駆虫ができません。

以前は成虫の駆虫薬が販売されていましたが、現在では販売中止となっているため、犬糸状虫は予防が中心となっています。

ときとして命にもかかわる怖い病気ですが、幸い薬により発症予防が100%できる病気です。

犬糸状虫の感染がないかどうかを血液検査にて確認をしてから、予防薬の投与を行います。

最近では、粒や粉の薬のみならず、おやつタイプや滴下タイプ、注射タイプなど、様々な種類のフィラリア予防薬が利用されています。

まとめ

犬や猫においては、様々な先天的・後天的な循環器疾患が多数あります。

それぞれの病態を理解することで、動物の異常に早期に気がつける可能性があります。

早期発見と早期治療で、良好な管理をしてあげるようにしましょう。

参考資料
・辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press
・辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,猫の治療ガイド2020,EDUWARD Press
・信田卓男,高橋貢若,尾義人,菅沼常徳,木村準,杉田喜与春,北昂,低体温麻酔によるイヌの卵円孔開存閉鎖手術の1治験例
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