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【もう迷わない】動物病院で使用する輸液剤の種類と特徴「輸液剤の使い分けについて解説!」

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動物病院で使用する輸液剤にはたくさんの種類があります。

獣医師から「○○(輸液剤)を流速△△で流しておいて!」という指示はよくなされると思います。

では一体、これら輸液剤の使い分けはどうしているのでしょうか?

この記事では、

・輸液療法の目的
・輸液剤の種類
・どの輸液剤を使うべきかの判断

などを愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しく丁寧に解説していきます!

院内にある輸液剤について理解を深めたい方は、ぜひ読んでみてください。

また、輸液量を簡単に自動計算してくれるツールについてはこちらをご参考にしてください。

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目次

輸液療法の目的とは?

そもそも、輸液療法の目的とは、

  • 生命維持に不可欠な体の恒常性の維持
  • 体液の代謝異常(水分・電解質・酸塩基平衡の異常、栄養障害など)の正常化
  • 体液の代謝異常の予防

などの意味があります。

体液を正常な状態に保つこと』が輸液療法の最も重要な目的となります。

輸液(晶質液)の種類

輸液(晶質液:膠質成分コロイドを含まない電解質液)の種類は、大きく3つに分けることができます。

そもそも、体液の浸透圧は285±5mOsm/Lに保持されており、これとほぼ同じ浸透圧を持つ液を等張液これより低い浸透圧の液を低張液高い浸透圧の液を高張液と呼びます。

輸液もこの3種類に分類され、体液と輸液の浸透圧差によって輸液剤は体内に分布します。

①電解質だけで血液の浸透圧とほぼ同じ値に調整してあるもの

電解質だけで血液の浸透圧とほぼ同じ値に調整してあるものには、

  • 生理食塩水
  • リンゲル液
  • ハルトマン液

があります。

生理食塩液

0.9%の食塩液で、Na⁺、Cl⁻ともに154mEq/Lの濃度となっているものです。

K⁺を含まない輸液剤なので、高カリウム血症の動物の輸液管理や、逆に低カリウム血症の動物でカリウムを加えたいときなどにカリウム製剤を輸液に加える際、計算がしやすいのでよく用いられる輸液剤です。

特に糖尿病の初期治療において、カリウム濃度の調整のため用いることが多いです。

リンゲル液

筋肉の細胞や皮膚の細胞に対しての適切な濃度の電解質を含有した輸液剤で、もっとも細胞外液の組成に近く作成されています。

注射ではなく、経口摂取においても、脱水症状時の水分補給に効果があります。

いわゆるスポーツドリンクは、このリンゲル液を元に、飲みやすいよう食塩を調整したものとなっています。

ハルトマン液(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液)

生理食塩液やリンゲル液を比較的大量に投与すると、血液が希釈され、血液中の酸を中和する成分であるHCO³⁻が少なくなることで代謝性アシドーシスを引き起こします。

この状態を防ぐために、乳酸(肝臓で代謝されることでHCO³⁻を生じる)や酢酸(筋肉と肝臓で代謝されてHCO³⁻を生じる)を加えてある輸液剤の総称をハルトマン液と呼びます。

一般的には、乳酸リンゲルや酢酸リンゲルがこれに該当し、動物医療において最もよく使用する輸液剤です。

②ブドウ糖だけで血液の浸透圧とほぼ同じ値に調整してあるもの

ブドウ糖のみが含まれていて、浸透圧を血液と同じような値にしてある輸液剤です。

細胞内脱水を改善したいときに、細胞内へ水を供給する目的で選択されます。

5%ブドウ糖液などがあります。

③電解質とブドウ糖を混ぜて血液の浸透圧とほぼ同じ値に調整してあるもの

電解質とブドウ糖を混ぜて血液の浸透圧とほぼ同じ値に調整してあるものには、

  • 1号液
  • 2号液
  • 3号液
  • 4号液

があります。

1号液

生理食塩液あるいはハルトマン液を5%ブドウ糖液で2/3~1/2に希釈したものです。

カリウムが含まれていない輸液剤のため、腎不全などで状態がよく分からないけど、とりあえず輸液を開始したいときなどに使用します。

最初に選択しやすい輸液剤であるため『開始液』と一般的には呼ばれます。

2号液

Na⁺とCl⁻については1号液とほぼ同じですが、K⁺、HPO₄²⁻、乳酸、Mg²⁺などの細胞内成分を含んだ輸液剤です。

K⁺を加えて作成されており、尿が出た後の低張性脱水のように、水とNaの酸が失われている病態の治療に向いているため、『脱水補給液』とも呼ばれます。

3号液

生理食塩液あるいはハルトマン液を5%ブドウ糖で1/3(1:2)に希釈したもので、これは一日尿量で体から失われるNa、Cl、K量とほぼ同じ濃度に設定されているものです。

尿量が確保されている動物においては、細かい計算をしないで輸液の維持に使用できるので、『維持液』という表現が用いられています。

4号液

生理食塩液あるいはハルトマン液を5%ブドウ糖で1/4(1:3)に希釈したものです。

術後早期の動物に使用することが多いことから、『術後回復液』とも呼ばれます。

特殊な輸液剤

コロイドを含む電解質液(膠質液)や、栄養を供給するための輸液剤もあります。

膠質液は、晶質液に比べて、血管内にとどまる量を多く維持することができるため、大量出血の際や血圧を上げたい際などに用いられます。

HES(ハイドロキシエチルデンプン)製剤やアルブミン製剤などがあります。

栄養補給するための輸液剤には、

  • アミノ酸輸液
  • 高カロリー輸液用基本液(糖質輸液剤)
  • 脂肪乳剤

などがあります。

口から食事が摂れない場合や絶食にしたい疾患(嘔吐症例や膵炎治療中など)のときに使用します。

まとめ

輸液剤の種類や使うタイミングを理解することで、動物の状態にあわせた輸液管理を行うことができます。

早速、院内にある輸液剤について、きちんと理解ができているのか?確認をしましょう。

参考資料
・佐野忠士,チームで取り組む 獣医師・動物看護師のための輸液超入門,interzoo,p98-p108
大塚製薬 輸液の基礎理解
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