動物看護師として働くためには、
「投与された薬が、体内でどうやって効果を示すのか?」
「薬はどうやって分解や吸収をされるのか?」
といった薬理作用や薬物動態を理解する必要があります。
この記事では、
・薬の吸収・分布・代謝・排泄
について愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しく丁寧に解説していきます。
体内で薬がどうやって効果を発揮し、外に出されているのかを理解することは、動物看護をしていく上でとても大切です。
薬の基礎について知りたい動物看護師さんは、ぜひ読んでみてください。
また、「薬剤の投与方法や取り扱い方法」をまだご覧になってない方は、こちらもご参考にしてみてください!
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動物看護師が知るべき薬理作用
薬理作用とは、投与された薬物が生体に及ぼす作用のことです。
薬理作用には、病気の治療目的とし、薬に期待される作用である『主作用』と、主作用ではない作用の『副作用』があります。
副作用の例としては、
・ストレプトマイシンの聴覚障害
・モルヒネの呼吸抑制
・非ステロイド系抗生物質の消化器潰瘍
などがあります。
薬が効果を示す速さには投与経路も関係しており、「静脈内投与>直腸内投与>筋肉注射>皮下注射>皮内注射>経口投与」の順に効果の発現が速くなります。
また、動物の状態や管理方法によって投与経路を変えることも重要です。
すなわち、吐いている動物に経口投与をしても吸収されないですし、自宅での静脈投与・筋肉注射は難しい場合が多いです。
動物看護師が知るべき薬物動態
薬物は体内に吸収されたのち、血流により標的器官に運ばれ、作用を示します。
その後、代謝を受け、体から排泄されます。
この、体内における薬物の一連の流れ、
- 吸収(absorption)
- 分布(distribution)
- 代謝(metabolism)
- 排泄(excretion)
は、ADME;アドメと呼ばれています。
吸収
薬物が効果を発揮するためには、まずは『吸収』をされる必要があります。
生体外でどれだけ効果のある薬であったとしても、体内で吸収を受けなければ全く意味がありませんよね。
薬物の多くは、
- 受動拡散;単純拡散
- 濾過(ろか)
- 担体輸送
という方法によって吸収されます。
細胞膜はリン脂質二重層なので、脂溶性の薬や非解離型(非イオン化)の薬は濃度勾配によって簡単に通過をします。
また、分子量が極めて小さい薬も、受動拡散による通過が可能です。
毛細血管の小さい孔から濾過をされて吸収されることもあります。
タンパク質は小さい孔を通過できないため、タンパク質に結合している薬は濾過されません。
担体輸送には能動輸送と促通拡散があり、前者は濃度や電気的勾配に逆らって物質輸送を行うため、エネルギー(ATP)が必要となります。
後者は勾配に従って物質輸送をするため、エネルギーは不要となる輸送です。
分布
薬物が吸収された後は、その薬が目的とする臓器に到達して作用する必要があります。
脳に作用してほしい薬は脳に届くべきですし、腎臓に効いてほしい薬は腎臓に行かないと意味がないですよね。
このように、吸収された薬がどこの臓器に移行するのかを『分布』といいます。
この際に、血液と臓器間にある特殊なバリアー、すなわち、
・血液-胎盤関門
・血液-精巣関門
といった薬物の血中からの移行を制限する仕組みを考慮する必要があります。
また、薬物の多くは血管内で主にアルブミンというタンパク質と可逆的に結合をしており、結合したものは細胞膜を通過できません。
そのため、タンパク結合能が高い薬物は、なかなか細胞膜を通過することができず、作用の発現が遅くなります。
代謝
薬物の代謝の役割としては、解毒と代謝的活性化があります。
つまり、薬物は生体にとって異物であるため、それを除去する機構である『解毒』と、代謝を受けることで作用を発揮する『代謝的活性化』という、相反する反応です。
薬物の代謝は、主に酵素によって行われ、
非ミクロソーム系:ミクロソーム以外の部分や血液中に存在
に大別され、水様性を増すことで尿中に排泄されやすくなります。
排泄
最終的に、吸収や代謝を受けた薬物は、体の外に排泄をされます。
排泄は、尿中か胆汁中に行われますが、主たるは尿中排泄となります。
そのため、排泄を理解するには、腎臓の機能について学ぶことが重要です。
他にも、呼気や乳汁中への排泄もあります。
まとめ
薬理作用と薬物動態を理解することは、その動物の治療過程に大きく関わってきます。
「この投与経路なら、いつ頃効果が出るのか?」
「投与された薬は、体内でどのような動きをするのか?」
などをしっかり理解するようにしましょう。
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