犬や猫などペットの健康的な生活をサポートする際には、栄養学について学ぶことが必須となります。
そのなかでも、基礎の部分である『五(六)大栄養素』のそれぞれの働きや機能、エネルギー要求量などについて、愛玩動物看護師専門の当サイトが詳しく丁寧に解説していきます。
動物看護師として栄養学を基礎から理解したい方は、ぜひ読んでみてください。
動物看護師に必要な栄養学の知識「五(六)大栄養素」
『五大栄養素』という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。
動物にとって欠かせない栄養素である、
- 炭水化物
- 脂質(脂肪)
- タンパク質
- ビタミン
- ミネラル
をあわせて『五大栄養素』といいます。
これに『水』を加え、六大栄養素と呼ぶこともあります。
これらの中でエネルギー源として利用される栄養素を三大栄養素といい、
- 炭水化物
- 脂質(脂肪)
- たんぱく質
がこれに当たります。
三大栄養素は体内に入り、消化吸収をされてエネルギー源として利用されるだけでなく、体内で必要な物質に再合成されて利用されます。
①炭水化物
みなさまご承知の通り、炭水化物は動物のエネルギー源として重要です。
糖質はエネルギー源として重要な一方で、食物繊維は胃腸の機能を整える働きがあります。
グルコースは脳の活動や心臓の鼓動に必須のエネルギー源であり、多くの動物はアミノ酸やグリセロールから『糖新生(とうしんせい)』というメカニズムによっても作ることが可能です。
そのため血糖値の維持に炭水化物が必須ではなく、タンパク質の供給が十分であれば、炭水化物は必ずしも必要ではないということが証明されています。
ただし、炭水化物はフードの形を成型したり、便通を整えたり、当然エネルギー源としても使用されるため、なくてはならない栄養素です。
②脂質(脂肪)・必須脂肪酸
脂質(脂肪)もエネルギー源として重要であり、ホルモンや細胞膜の構成にも必要な栄養素です。
動物にとっての脂肪酸は、必須脂肪酸(食事から摂取する必要のある脂肪酸)と非必須脂肪酸とに大別されます。
必須脂肪酸には、
- ω6脂肪酸(リノール酸、γリノレン酸、アラキドン酸)
- ω3脂肪酸(αリノレン酸、EPA、DHA)
があります。
リノール酸があればγリノレン酸とアラキドン酸は作れるため、リノール酸のみを必須脂肪酸という研究者もいます。
ただし猫ではアラキドン酸の合成ができないため、アラキドン酸も必須脂肪酸となります。
必須脂肪酸は、「皮膚や被毛の健康維持」、「免疫機能や繁殖」にも関連しており、体のほとんどすべての機能に関係しています。
③タンパク質・必須アミノ酸
タンパク質は犬や猫のエネルギー源として重要な栄養素です。
特に肉食動物である猫においては、アミノ酸からグルコースを作ってエネルギーにするため(糖新生;上述)、タンパク質の要求量は高くなっています。
細胞や臓器類、血管や消化器官などになる『構造性タンパク質』と血液中のヘモグロビンやアルブミン、抗体や消化酵素、ホルモンなどになる『機能性タンパク質』の二つに大別されます。
タンパク質は20種類のアミノ酸がたくさん結合したものです。
そのうち体内で作ることができない(食事として摂り入れなければいけない)アミノ酸を必須アミノ酸と言い、犬においては、「アルギニン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン」が、猫おいてはこれらに加えてタウリンが必須アミノ酸となっています。
④ビタミン
ビタミンは動物の代謝に必須である微量栄養素です。
ビタミンの多くは、生体内において酵素の活性を発揮するための補酵素として、また、様々な栄養上の必須機能を持っています。
欠乏症や過剰症(脂溶性ビタミンのみ)があるため、適量の補給が重要です。
⑤ミネラル
ミネラルは、歯や骨の構成成分となったり、体のpHや浸透圧の調節を行ったりしています。
ミネラルにも欠乏症や過剰症があるため、適量を摂取することが大切です。
⑥水
五大栄養素が体内で利用されるためには水が必須となります。
また、水は体内で最も多い物質であり、体重の65%程度を占めます。
体脂肪の大部分、体タンパクの半分以上を失っても生存は可能ですが、体水分の約20%を失うと死亡すると言われています。
それだけ水は重要な栄養素であるため、動物が常に新鮮な水を飲める環境にしてあげることは必須となります。
エネルギー要求量について
動物のエネルギー要求量は、動物の状態によって大きく左右されます。
すなわち、運動量や生活環境の影響、基礎代謝といったことなどを考慮する必要があります。
エネルギー要求量を知ることで、与えるべき食事量を知ることが可能となります。
計算式をもとに活動係数を乗じて計算することになります。
RERやDERなどのエネルギー要求量に関する詳しい内容や計算方法については、こちらをご参考にしてください。
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まとめ
動物看護師が栄養学を学ぶ際には、まずは五(六)大栄養素について理解をする必要があります。
動物の健康維持のためにも、しっかり基礎理解をしましょう!
左向敏紀 他,臨床栄養学,interzoo,2019
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